

人間、覚悟さえ決まっていれば、失敗はしないものです。
この「覚悟」とは、自分で人生のサイコロを振ることです。
「覚悟が決められない人」とは、自分で自分の人生のサイコロが振れない人、あるいは転がったダイスの出した結果を、人のせいにしたがる人です。
私たちは、自分でサイコロが振れそうもない人には、初めから「あなたは黙って今の会社にいらっしやい」と言います。
例えばある人をスカウトしようとしたときよくある返事の一つに、「次の人事異動まで待ってくれ」というものがあります。
これは企業に勤める普通の人から見たら何の不思議ヘッドハンタとつき合う法もない話かもしれません。
しかし本来は自分でダイスを振る話なのに、半分を会社に振ってもらおうとしている。
そしてそういう自分の姿勢に自分で気づいていない。
欧米人にはとても理解できない話です。
ある人を日本の証券会社から外資系の証券会社へスカウトしようとしたことがありました。
この候補者も、次の定期人事異動で希望どおりの配属になれば、転職は見送ることになっていました。
これを聞いたあるアメリカ人は、「日本はまだ奴隷制度なのか?」と。
もちろん半分は冗談ですが、別の会社に行くということは自分の人生について自分でサイコロを振る話なのに、それを会社の人事部が決める次の人事異動と同じレベルで考えるこれがアメリカ人の彼にはおよそロジカルではないと映ったのです。
確かに今まではいったん企業カプセルの中に入れば、向こう三〇年間、一度も自分でサイコロを振ることはありませんでした。
それは意思決定を迫られることなく、その場その場を無事に過ごせればよいという、「風とともに去りぬ』に登場するタラの農園の奴隷に通じるものがあるかもしれません。
こうした姿勢のまま転職すると、新しい職場で思いどおりの結果が出ないとき、「やっぱりあのとき辞めなければよかった」「異動の辞令を見てからにすればよかった」と悔やむことばかりに意識が向いて、問題を解決することに力が向けられません。
こうしたことは結局、「たった一度の人生をどう生きるか」という点にすべて立ち返ると思います。
ですから私たちが候補者の方とお会いしたときに人生観をお互いに語るというのは、腹のくくれる人かどうかを確認して、覚惜を決めて転職してもらうためです。
そういう人でないと、能力も発揮できないし、入社した企業の側でも困るからです。
だから私たちはヘッドハンターでありながら、候補者に会うと、引き止めるケースも多いのです。
「この人は覚悟が決まっていないな」と思うときは、「やめておきなさい」と言います。
それでもこういう人は二、三年のうちにはやはり転職する例が多いようです。
最初の機会は見送っても、一度そうした転職の具体的な話があると、そのときはまだ未熟だった自分の考えや仕事に対する姿勢がだんだん成熟してくる。
そして今度は自分から積極的に転職への準備を始める、つまり自分でダイスを振ろうという姿勢が出てくるのです。
もしあなたが四〇代後半で、「オレにはサイコロは振れない」と思ったら、「そのまま今の会社で逃げ切りなさい」と言いたい。
しかしそのあなたの会社だって、これからは自己責任でサイコロの振れる人を必要としているのですが。
転職を考えるときには、まず自分自身の人生について、人にきちんと語れるものを持っていること。
これがまず大前提です。
メッセージを持ち、人生哲学を持ち、自分はこういうことをやってきた、そしてこういうことをやりたいという、語るべきものがあるかどうか。
女街おじさんや転がしてナンボの世界の人ならともかく、私たちがお話しするときは、「たった一回の人生、あなたは何がしたいのか?」というところまで突っ込んで考えていただかないと、アドバイスしょうもないのです。
それが依頼者の場合なら、企業経営の理念を語れるかどうかです。
読者の方は、きっとみなさん候補者になる可能性を持つ方でしょう。
まず自分の人生をよく考えて、志を持って下さい。
そうしたら次に、それらをヘッドハンターにアピールできないといけない。
ですからあなたのほうからヘッドハンターを選択するときは、相手は自分の話を聞いて、理解してくれるレベルのヘッドハンターでないといけません。
ウマが合うかどうか、波長が合うかどうかというフィーリングの部分ももちろん含まれます。
Jのメンバーはみな一流のヘッドハンターでありたいと願っていますが、だからといって一流の候補者でも、波長が合わないということはあるでしょう。
逆に、「失礼ながらいまひとつ」という候補者でも、何となく放ってはおけないなと思うような方もいるわけです。
お互いの相性というものはかなり重要なものです。
候補者のほうでも、自分と波長の合う人を選んでもらえばいいのです。
そういうヘッドハンターとつき合うことです。
「医者と弁護士とヘッドハンターは、二一世紀を迎えるビジネスマンにとって、あらまほしき三人の友人」。
これは私がよく言っていることです。
腰を据え、品定めをしてつき合うべきです。
そして自分はスカウトされるにはほど遠いと思っている人も、あるいはいつかはヘッドハンターとつき合うようになりたいものだと思っている人も、あまりこれまでの価値観や思考の枠に縛られず、日々自分の仕事を丁寧に、もっと能率よくできないか、もっと工夫の余地はないかと点検して下さい。
そして企業内起業家の志で仕事をして、自分を磨いていつか私たちがあなたをスカウトしに行くことになるでしょう。
いて下さい。
まだ若くて、年収四五〇万円台の人でも、いま真面目に自分の将来をどうしていこうかと考えている人なら、私たちはちゃんと対応します。
少なくとも「ここから五年間こうして励んでごらんなさい。
そうしたら五年後に一〇〇〇万円でスカウトしに行ってあげます」と言えます。
そして、ある日私たちからのコンタクトがあったら、まず会ってみることです。
私たちが候補者をスカウトに行くとき、先方の対応はさまざまです。
おおむね候補者は好意的ですが、中には「会社に電話をかけできたりしては困るじやないか」と慌てふためく人もいます。
でも私たちが見る限り、有能な人ほど構えた姿勢がなく、喜んで私たちの話を聞いて下さいます。
彼らはそうやって常にオープンなスタンスで生きてきたのでしょう。
「おーい、ヘッドハンターが来たから、ちょっとお茶飲んでくるぞ」と大声で部屋の人間に言い渡してきたある銀行の課長さんは、一〇分ほど話して頭取になってもおかしくないレベルの方であることがわかり、さすがにあきらめた例もありました。
いまこの本を読んで下さっているあなたも、やはり候補者です。
われこそはと思う人は自薦でどうぞ。
志のある方と見極めたら、ちゃんと相談にのります。
そういう方は、この本を読んだら、とりあえず「自分のヘッドハンターになろう」と思ってごらんなさい。
自分自身が自分自身のヘッドハンターになるのです。
もしあなたが自分のヘッドハンターだったら自分にどういう値づけをするか?自分をどう評価するか?どこに行けば個性や才能が生きるか?日ごろそういうことを頭の隅に入れておくと、いろいろな事がかただの夢から実現可能な目標 に変わっていくのがわかるでしょう。
これは非常に大事なことです。
あとは普通の人間としてのおつき合いと同じ。
誠実に接すること。
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